テクノロジー

SLD光源の原理や用途とは

■スーパールミネッセントダイオード(SLD)光源とは

 スーパールミネッセントダイオード(SLD:Superluminescent diode)光源は、発光ダイオード(LED:Light emitting diode)光源のようにブロードなスペクトルをもち、低コヒーレンスで、かつ半導体レーザ(LD:Laser diode) のように高輝度の光を発光する光源です。いわばLEDとLDの中間的な特性を有した広帯域光源です。

 光源を発光の原理や現象によって分類すると、物質が高温に加熱されて発光する熱放射と、熱や温度に関係なく、原子や分子のエネルギー状態の変換によって発光するルミネッセンスの二つに大別することができます。そのルミネッセンスの中で、スーパールミネッセンスは発生した自然放出光が誘導放出で増幅された状態の光を指し、SLD光源はこの発光の原理を利用した光源となっております。

 SLDはLDのように狭い活性層で発光するので、光源からの光を光ファイバへ効率よく入射できる利点を持ち、OCT、光ジャイロをはじめ計測、センサ用インコヒーレント光源として広く使われています。

■SLDの発光の原理

SLD発光の原理はLDやLEDと同じ

 SLDの発光の仕組みはLDやLEDと同じです。発光はpn接合の順方向に電流を流すことによって起こります。即ち、p側がプラス、n側がマイナスになるように電源を繋ぐと、n側から電子、p側から正孔が流れ込み、接合部分で両者が出会い、電子が正孔に向かって落ち込むときに光が出ます。

 

SLDとLDの違いは端面反射の有無

 SLDの構造はLDと殆ど同じです。いずれも活性層(発光層)をn型とp型のクラッド層で挟んだ構造(ダブルへテロ構造)がn型基板上に作られており、電極から電流を流せます。違いは、SLDでは活性層の端面がARコートされ光が反射しないようになっていますが、LDは劈開した端面で光が反射します。即ち、違いは端面で光が反射するかしないかです。(図1.参照)

SLDとLDの基本構造1
SLDとLDの基本構造2

図1.SLDとLDの基本構造

 

 また、光の端面反射をさらに無くしたい場合は図2のように光導波路を劈開面に直角でなく斜めにします。このようにすると、端面で反射した光は導波路に向かって真っ直ぐ戻らないので反射光を低減できます。

SLD の斜め光導波路

図2.SLD の斜め光導波路

 

SLD光源の光は低コヒーレンスでブロードな光

 SLDとLDの違いは端面反射の有無ですが、この違いにより発生する光が異なってきます。SLDの場合は、発生した自然放出光が活性層を進むにつれ誘導放出で増幅され、そのまま出力されます。この光をスーパールミネッセンスといいますが、希土類ドープファイバを使ったASE光源と全く同種の光なのでASE光と呼ぶ場合もあります。種火である自然放出光は位相が不揃いで波長も幅があるため低コヒーレンスでブロードなスペクトルになります。

 一方、LDの場合は、発生した自然放出光が活性層を進むにつれ誘導放出で増幅されるのは同じですが、端面で反射されるので活性層を何度も往復した後で出力します。往復するにつれ増幅されやすい波長の光だけが強くなり、位相も揃ってくるのでスペクトル幅の狭いコヒーレンスな光であるレーザ光となります。(図3.参照)

SLDでの光増幅

SLDでの光増幅

(活性層を増幅されながら進んでそのまま出射)

 

SLD 、LD の増幅とスペクトル1
LDでの光増幅

LDでの光増幅

(活性層を増幅されながら何度も往復してから出射)

 

SLD 、LD の増幅とスペクトル2

図3.SLD 、LD の増幅とスペクトル

 

SLD光源の発光波長

 SLDの発光波長は、LDやLEDと同じく使用する半導体材料のバンドギャップの大きさによります。バンドギャップの大きな半導体では短い波長、小さな半導体では長い波長を発光します。例えば、AlGaAs系では0.8 ~ 0.9μm、よりバンドギャップの小さなGaInAsP系では1.3 ~ 1.6μmを発光します。また、SLDではよりブロードな波長の発光が求められます。そのため、活性層の長手方向に半導体の組成を少しずつ変えるなどの工夫がなされる場合があります。

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