テクノロジー

マルチコアファイバーの特徴や用途とは

■マルチコアファイバーとは

 マルチコアファイバ(MCF:Multi Core Fiber)とは、一つのクラッドの中に複数のコアを配置した光ファイバーです。コアごとに別々の情報を送れるので、1本のファイバーで送れる情報量(伝送容量)を増やすことができます。このような多重方式を空間分割多重方式(SDM:Space Division Multiplexing)といいます。大容量伝送が必要な次世代の基幹伝送路や伝送距離は短いが大容量伝送が必要な光インターコネクトなどでの利用が考えられています。

■マルチコアファイバーの詳細

基幹伝送路用途について

 基幹伝送路では、増え続けるデータ通信量に対応して伝送容量の増大が課題となっています。通常使われるシングルモードファイバー1本で送れる伝送容量は、時分割多重(TDM)や波長分割多重(WDM)などの大容量化技術を使ったとしても入射光強度(1.5ワット程度)や非線形現象により制限され、100Tbit/s程度で頭打ちになるといわれています。このため、次世代の基幹伝送路用ファイバーとして1本のファイバー(クラッド)の中に複数のコアを入れるMCFによるSDM伝送が検討されています。(図1. 参照)

 

図1. シングルモードファイバとマルチコアファイバの断面図

 

 マルチコアファイバ(MCF)で伝送容量を増大するには、コアの配置間隔を狭くしてたくさんのコアを入れるか、クラッド外径を大きくしてたくさんのコアを入れることが考えられます。しかし、伝搬する光信号はコア内だけでなく一部はクラッドにはみ出して伝わりますので、コア間の間隔を狭くするとコア間での信号光の漏れ込み(クロストーク)が起きてしまい伝送品質を劣化させてしまいます。(図2. 図3. 参照)  基幹伝送用途では、クロストークの影響は雑音と同じ影響を及ぼすので十分に小さくする必要があり、配置するコア間隔を数十μm以上離す必要があります。また、クラッド径を太くすると従来のシングルモードファイバーに比べて製造生産性が悪くなるとともに既存の製造設備や接続冶具なども変更が必要となるので、既存設備を有効活用できる国際規格に準拠したクラッド径(125μm)で4~7コアを配置するマルチコアファイバーが主に検討されています。

 これまでに、製造事業者が異なるクラッド径125μmで4コアのマルチコアファイバを20~40kmごとに相互接続して、全長316㎞、平均損失0.21dB/km、総伝送容量118.5Tbit/sが達成されています。

 

図2. コア間隔によるクロストーク

図3. マルチコアファイバのクロストーク(2コア)

●光インターコネクト用途について

 光インターコネクト用途では、必要な伝送距離は長くないのでクロストークによる制限やクラッド径に対する制約よりも省スペース性や大容量化が重要になります。ただし、ガラス径を大きくしていくと曲げたときにファイバの内外周にかかる応力が大きくなり破断しやすくなるので、外径は太いものでも300μm以下が主とされています。また、より大容量化する方法としてマルチコアファイバの各コアに複数のモード(マルチモード)が伝搬可能なマルチモードコアを使うモード分割多重(MDM:Mode Division Multiplexing)も検討されています。

 マルチモードコアにすると伝送容量は、(コアの数)×(コア内を伝搬するモードの数)と増やすことができますが、コア間クロストークに加え伝搬するモード間でのクロストーク、各モードの伝搬速度(モード群速度)差、モード間での伝送損失差が伝送信号波形を歪ませる要因となります。(図4. 参照)  マルチモード化に伴う信号品質の劣化は伝搬するモード数が多くなるほど大きくなります。このため、伝搬するモード数を3~4以下にしたフューモード光ファイバー(FMF:Few Mode Fiber)が検討されています。これまでに、ファイバー長5㎞、クラッド径300μmで36コア×3モード多重で108の空間伝送路を持つマルチコアファイバが作られています。

 

図4. マルチモード(2モード)ファイバのモード間結合による影響

 

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